本を売るための攻防(出版社の内情4)
新刊を販促するに当たり取り決めることは、多くあります。
「初版部数」、「書店への配本数と店舗数」、「帯」、「パネル」、「広告を掲載する新聞、交通広告」などがあります。
取り決める販促会議では、議論が絶えません。
たとえば重版部数を決める時は、営業マン(外勤者)とデータマン(内勤者)との間で意見がぶつかります。
重版部数を決定するのは、データマンです。
営業マン:「レジ前に陳列しているから週50冊は売れる!」
データマン:「返品部数を考えているのか?」
営業マン:「この書店が起点となり全国へ広がる。今重版しないと機会損失につながる」
データマン:「データを見たのか?週売は5冊だ!3カ月後に返品になる」
営業マン:「データだけで判断をするな!在庫が潤沢にあればさらに売れる!」
データマン:「ふざけるな!絶対に重版はしない!」
営業マンVSデータマンとのやりとりです。
営業マンとデータマンとは、意見が合わないことが多いのです。
本には、「売れるタイミング」があります。
今日売れていた本が、翌日に売れなくなることも良くあるのです。
営業マンは、「より良い陳列場所を確保するため」、「さらに売上を伸ばすため」にデータマンに訴えます。
データマンは、「返品率を重視しながら、過剰在庫にならないため」に本をコントロールします。
最終的には1冊の仕上がり(適正販売部数)を重視します。
データマンである重版担当者の気持ちも分かります。
しかし重版を細かくし版を重ねることも必要ですが、大ヒットの本に育ちません。
実際に重版を渋っていた本が、重版を繰り替して30万部を突破した実例もあります。
さらに日の目を見なかった本が、他出版社から出版されてベストセラーになった本もあります。
発売後即重版をした本の出来上がる日が遅く、売れ行きが鈍くなったこともあります。
重版した本を書店へ搬入しましたが、販売機会を逃して返品につながったのです。
重版に正解はありません。
「経験」と「勘」を生かし、時として勝負をする本もあります。
営業マンとデータマンには、立場の違いにより乖離があるのは当然です。
ただいえることは営業マンは納得した重版部数が決まれば、必至に販促をします。
売れている本を、さらに売り伸ばしているのです。
これが本来の販促の姿なのです。